Bag end diary

J.R.R.Tolkienとその作品を中心に、日々の出来事を一人のホビットが気まぐれに綴ります。

Oxford短期留学を終えて

Elen sila lumenn omentielvo.

そして、Mae govannen!

日本に戻って参りました、ありゃれんです。

今回も真面目な話になりそうですが、思ったままのことを正直に書かせていただこうと思います。普段から日常のみならず、Tolkien Societyのアカウントをご贔屓にしてくださっている方々も、ご一読いただければ幸いです。

 

準備中は常に不安と期待がありましたが、いざヒースロー空港を降りてバスに揺られること約1時間、オックスフォードの地に足を下ろした瞬間。

何と実感の湧かなかったことか。

いや本気です。

「あぁ、来たんだなぁ」ってくらいで、自分が日本から離れ、約6000マイルも遠くの国にいる実感がまるでありませんでした。

海外に関しては小学生時代から憧れ、イギリスに憧れ始めたのは高校時代から。アクセントを変え、現地の文化について情報収集したり、Google earthを使って旅をしている気分を味わったりしていたものですが、あまりに想像通りだったのか、それとも他に理由があったのか、思うより興奮しませんでした。

ですが翌日から街並みを歩いたり生徒さんと話すうちに気づいたのは、

・電柱が見当たらない

・ベビーカーを押すパパさんが多い

・活気があって人々が生き生きしている

・ぶつかったり狭い場所を通るときは必ず"Excuse me""Sorry"と言う

・店員さんとお客さんの間で日常会話が弾む

・とにかく"Cheers"が多い

ということ。他にも色々ありますが、これらに気づいてやっとイギリスにいるという自覚を持ち始めました。

そしていよいよ学寮での生活が始まり、早速カルチャーショック。

 

憧れの洋室の一人部屋!(当たり前です)そして憧れのベッド!(ベッド未経験者)眺めも良い!紅茶もビスケットもスコーンも最高!

・・・え、シャワー1人5分?じゃないと後の人が水になる?

この朝食、量が多い上にちょっと不思議な味がするな。

うわ、そんな大雑把な対応でいいの!?皆フランク過ぎない!?

 

って感じでした。割と思った通りでしたが、想像以上に発見がありましたね。インフラは特に水道、貧弱とまではいきませんが使えないわけではなく、かと言って日本ほど整備されてはいない。朝食は典型的なビーンズとベーコンにスクランブルエッグ、そして量が日本より多い。スーパーや書店などでは店員さんがレジにいなかったり見当たらないことが多々あり、制服はあってもその下や髪型は人それぞれ。授業でも、無駄に細かいことはどんどん省いてシンプルに分かりやすく進んで行きます。

最初の授業では、オックスフォードを歩いてプリントの空欄を埋めろとのことでしたが、道ゆく人から声をかけてもらったり、こちらから声をかけても快く聞いてくださったり。ロンドン観光に行った時なんか、どこを歩いてもアフリカ系の人々から中東系、アジア系が必ず目に入り、チューブでは好きに喋ったり本を読んだり、時に小さい子に顔がほころんだり。女子トイレが見つからず困っていた時は、清掃員さんがあちらですよと言ってくださったり、友人の財布を探した時は見知らぬ女性が一緒に探してくださったりと、本当に人の優しさに触れる機会が多く、「これがエゲレスか・・・!!」と感じさせられました。

個人的に唯一残念だと思うのは、世界が誇る学問の町なのに、しかもその名がつくというのに、

OED(Oxford English Dictionary)オンラインに接続できないこと

いやいやここ世界のOxfordですよね?何で?

私が普段いる大学が接続できて何で現地でできないの?

ペーパーバック割とお金必要なのよ?持ち歩くの大変なのよ?

と、ほんの少し悶々としていました。

 

そして授業内容ですが、これがなかなか楽しい。いや、本当に楽しい。

全て英語というのは言わずもがな、英国文化と日本文化を比べたり、プレゼンの準備やイディオム、アメリカ英語とイギリス英語を比べたときなんかクラスメイトが爆笑してました。アカデミックと言えるほどの専門知識や用語は使わないものの、絶対に役に立ち生きていく上で欠かせない能力となるものを教わりました。

それからプレゼンの準備としても帰国後の論文としても、個人的にも興味があることでも先生方に色々質問をしましたが、丁寧に対応して下さっただけでなく、その回答がこれまた面白いんです。非常にジョークの効く先生がいたんですが、「これは意外!」と思うような回答をいただき、調査もかなり捗りました。

そしてやはり何と言っても嬉しかったのが、加点式

色々あったものを直訳すると、

「いい推測だね、でも正解は別だ」

「深く掘り下げるとより良いものになるよ」

「ここが良かったね、次はどこを伸ばせばいい?」

など。満点からミスを引いたり間違いを探すのではなく、皆で案を出し合って正解を模索したり、意見を出し合ってより良いものにしていくというのが進め方です。向こうにいる時に気になって調べたんですが、日本では「減点式」がメジャーで「反省点」を書かされることが多々あり、「まぁそうだけど」と言うのが本音でした。

今思うと、これを小さい頃からしていたならそりゃ学を知る人も教養を持つ人も育つわよね、なんて。

ちなみにクラスメイト曰く、先生方が驚いていたそうです。割と意見を言うかなと思っていたのに、静かで質問も無かったと。でもそのおかげで意欲が増し、率先して案を出したり先生に聞いてみたりというのが増えました。

 

午前の授業は2回、それぞれ1時間半。間の30分休憩ではお世話になっている学生さんが紅茶を淹れてくれて、さらにビスケットのアソートが。皆で喋ったり、学生さんや先生方と会話したり、本を読んだりとのんびり過ごしていました。

ある日学生さんの一人から「何を読んでるの?」と聞かれたので「指輪物語だよ、ご存知?」と言うと、「あぁ、まだ読んだことはないけどかなり有名よね!ホビットは好きよ!」と。やっぱり現地の学生さんは違うッッ!!と思い、ファンタジーのお話で軽く盛り上がりました。その時 "The Wanderer"という古英語の詩をオススメされたのでスマホで読んでみたのですが(もちろん現代英語訳でです)、これが美しい。指輪物語のセオデン王のあの台詞はここからだったのか!と、もう発見に発見でうひょーってなってましたね。リンクを貼っておきますので、是非ご覧ください。

Anglo-Saxons.net : The Wanderer

その翌日だったか、別の日には先生の目につきまして、「それは何?」と聞かれ同じようにお答えしたところ、「ホビットは読んだし映画も観たよ、あれはいいよね」と。おぉさすが!となっていると、「映画は全部観たの?」と聞かれたので少し食い気味に「えぇ観ました(`・ω・´)」と答えてしまいました。後に質問してみたところ、「あれは好きだよ、凄くcreativeだよね」と答えてくださり、まさか初海外、しかもそれがトールキンゆかりの地で、好きと言ってくれる人がいたことにひたすら感動し、さらに彼の著作を読む意欲が増えました。仲間がいるって最高。もう最高。

 

さて脱線しましたが、授業が終わるとディナー、これもまた美食国家と言われる国の人々の舌にはなかなか馴染まない。「ん?」となるようなものが多く、オブラートに包まないで普段私が喋るような口調で言うならば、「**デカいし味付けが謎だし、不味くはないけど美味くもないな」って感じです。カレーが連続で出た時は思わず友人と「不味い」。ごめんなさい。実際そう言いました。

ディナーの後は学生さんたちとのアクティビティ。スナックパーティやアイスパーティ、タピオカドリンク、カラオケ、パブなど、学んで脳を使った後の甘いものは格別に美味しいという通り、非常に楽しませていただきました。あぁ楽しいなんて思っていると時間が経つのは早いもので、シャワーを浴びて一人の時間を楽しんだ後に眠りにつく。そんな毎日でした。

詳細は1週間ごとに区切ったものを後々更新しますので、どうかお待ちください。

 

そんな毎日を過ごしましたが、嘘のようにあっという間な3週間でした。もうこれ以上ないほど、日本の大学で学んでいた時よりはるかに充実した毎日で、日常生活はもちろんのこと会話もほとんど全てが英語、そして2つの国で過ごしたという経験から人間としてもまた一つ成長したということ。現地に馴染んできた頃からずっと思っていましたが、向こうでのライフスタイルは思った以上に私に合っていたようです。もう1週間、いや1ヶ月、ずっとここにいてもいいと本気で思っていました。

実は帰国前日、荷物を詰めながら一人で静かに涙を拭っていたんです。そんな大げさな、と思われるかもしれませんが、全ては見えていなくても、オックスフォードの町にいて、ロンドンを見て回って、イギリスに恋をしてしまったこと。(今思うと恐らく恋ではなく愛が深まったと言うべきでしょう) 現地の人や学生さん、先生方とたくさん話をして、異国の地で大好きだと思える人々がいること。それに加えて私がやりたいと思っていることや目標は、日本では大して価値がないと思われてしまいがちなことだけれど、海外では本来そうであるべき価値を置かれるというのが主な理由です。

でも考えたのは、ずっといるならともかく、あと1日や1週間長くいたら、きっとさらに別れを告げるのが辛くなってしまう。それならもっと経験を積んで、そこに行くにふさわしい人間になって、自分にあった生活でやりたいことを叶えてやろうと決意しました。大好きな人たちに、また会えないこともないだろうと。

人生経験とそれによる決意、そして最後に、これもまた詳細なスケジュールでお伝えしますが、トールキンの地を巡ったことで得られた大きな自信です。

私が初めて指輪物語を読んだのは10歳ごろでした。当時は好きなファンタジーだからと読み進めていましたが、一年経たないうちに読破。中学でも少し読み返したりしていましたが、映画ホビットを観てからはさらに加速していき、大学に進む大きな動機になるまで。大学でもサークルを作るべくアカウントを作って友人に広めたり、さらにはラテン語や古英語、フィンランド語にも手を伸ばし。そしてネットで何度か教授の学んでいたエクセターやオックスフォードの街並み、お墓などを見ましたが、実際に足を運んだことで得たのは、それがバリンと打ち砕かれた感覚。前の記事でも書いた通りです。自分がそれを大好きで何よりも大事にしてきたのがようやく分かり、同時にそれを誇りに思いました。これからも大好きでいよう、研究活動を続けていこうと心に決めた大事な瞬間です。

 

大まかな流れと全体の感想としてはこんなところでしょうか。

文章だけでは伝えきれないので後々ラジオでお伝えしますが、ロンドンにいる間に私の喉に侵入してきたバイ菌がおさらばしてくれるまで、どうかお待ちください。

多分30分以上喋り続けると思いますので、ご覚悟を。

長々と書き連ねましたが、ありがとうございました。

近いうちに1週間ごとに区切ったものを上げますので、ご期待ください。