トールキンと文学 +追記
Mae govannen!
秋が来たかと思えばすっかりクリスマスムードですが、いかがお過ごしでしょうか。
『指輪物語』、そしてトールキンに魅入られて長くなりますが、良い学習環境を手に入れてからというもの、トールキン以外でも様々な作品に手を伸ばしている管理人でございます。
既にファンの方ならご存知でしょうが、指輪物語やホビットはそれ以前の妖精物語のみならず、中世文学からの影響も強く受けています。
その中でもダントツに私が好きなのが、
Sir Gawain and the Green Knight 。
まだ翻訳版しか読めていないんですが、何と言えばいいのやら、とにかく美しい。
どうなるのどうなるのっていうドキドキと、主人公ガウェインの心情や揺れ動きに目を奪われて、気づけば「もう終わり!?」という感じです。
山本史郎さんの訳ではそれに連なり、『真珠』という古英詩の訳も載っています。原作の写本にあった通りなんですが、この物語、作者不詳ということで、研究者さんの間では「パール詩人」とか呼ばれているそうです。
「誰が書いたか知らんがこいつはすげぇ奴だ!」となったんでしょうね。
作者不詳といえば勿論これ、
ベオウルフ(Beowulf)
が古英詩の頂点でしょう。
これは現在読み進めている途中ですが、古英語をマスターして原文のまま読めたらどれほどその良さがわかるだろうという気持ちです。
その為トールキンによる現代英語訳で読んでいますが、それでも圧倒されまくり。
トールキンの作品を読んだ方ならきっと好きになるのではないでしょうか。
続いてこちらも詩の1つ、
モールドンの戦い
です。
舞台は10世紀イギリス、主人公のビュルフトノスがヴァイキングに向かって猪突猛進していき、その身を散らすという物語です。
好みかどうかは置いといて、これは文学好きな方にとって必読でしょう。
具体的にどうというのは、管理人の語彙力と脳がその思考に追いつかない為省きますが、読んでおいて損はないはず。
この詩の一文、実はあの伝記映画で朗読されるシーンがあるんですよね。大学のベンチで、トールキンがジョー・ライトに語りかけています。この詩の全訳が、間違っていなければ
『消えたイングランド王国』
に付録として載っているはずなので、気になる方はそちらから読んでみてくださいね。
こういったあらゆる物から影響を受け、トールキンの作品が世に広まったわけなのですが、書いていて何となく思い出しました。
あの伝記映画、色々伏線があったり「お!」って思うことはあるのに、モヤモヤする部分がどうにも引っかかってしまうんです。
引きずりすぎじゃ!って思う方もいるかと思いますが、個人的にはあの映画は嫌いじゃないし、勿論好きだ!ってなる部分もあります。
ここから映画の感想の追記になりますが、重箱をつつくため、もういいですって方はどうぞブラウザバックして下さいね。
今思い返してみると、あのエアレンデルの詩はずーっと古い、Cynewulf からの引用。私もイギリスにいる間それを利用して調べ物をしたり、その一節を覚えたほど。
それに時折トールキンが描くものは、きっと彼の中にあったもので、黒の乗り手は非常に良い例かと思います。
言葉と物語はある程度影響を受けていても、シルマリルやその周辺に関してはエッダやサガなどに似た何かを感じさせますし、その出版に際してわちゃわちゃしたからこそ『指輪物語』や『ホビット』に繋がる長編が生まれたわけなんです。そしてそれが偶然にも『ホビット』を生み出し、そこから『指輪物語』が世に出た。
色々あって、『終わらざりし物語』『星をのんだかじや』までたどり着いた。
観た後にまた色んな作品を読みたいとはなるんですが、そう考えると、試写会の辺りで褒めるレビューを書いてしまったのは少し早すぎたかなと思います。でも後悔はしていない。
多分ある程度その名前や作品を聞いたことがあったり、またはあまり背景知識がない方にもある程度楽しんでもらえるような映画にしようと思った結果、あのラストのセリフに繋がったのかなと思います。
エステート側が「我々は一切関知しない」と言っていますし、ファンとしては納得いかない部分も多く賛否両論な結果になりましたが、個人的にはその通りかなと思っています。
これを読んでくださっている方の中にはいないと思いますが、
まだ読んでいないよっていう方は、是非シルマリルを読んでいただきたい所です。
私も来年のとあるイベントに向け、『終わらざりし物語』と一緒に復習する予定です。
え、まだ読み切っていないものがある?
未翻訳作品が大量に残ってる?
まだ出版される可能性もある?
本当にトールキンの世界には限がないですね。